【市川 介護】のうこうそくとは?
2025/06/06
1. 脳梗塞とは?
定義
脳梗塞は、脳の血管が動脈硬化や心原性塞栓(心房細動などによる血栓が流れて詰まる)によって閉塞し、血流不足で脳組織が壊死(梗塞)する状態です。一般に「脳卒中」の一種として、脳出血やくも膜下出血と区別されますが、日本国内では脳卒中死亡原因の約7割を占めると言われます。
分類
アテローム血栓性脳梗塞:動脈硬化が進行し、脳の太い血管(中大脳動脈など)が狭くなって起こる。
ラクナ梗塞(ラクナ症候群):細小な穿通枝が閉塞し、小さな梗塞巣(ラクナ)が多数できるタイプ。高血圧の影響が大きい。
心原性脳塞栓症:心房細動や心筋梗塞後などで心臓内にできた血栓が脳に飛び、比較的大きな末梢血管を閉塞する。
その他:血管炎や解離、血液凝固異常など特殊な原因もありますが、訪問介護の現場では上記3つが頻度として多い傾向です。
2. 脳梗塞の主な症状
脳梗塞は、梗塞部位(脳のどの血管が詰まったか)によって症状が異なりますが、発症時には以下のような “突然出現する神経症状” が特徴です。
2.1 前兆症状(一過性脳虚血発作:TIA)
TIA(Transient Ischemic Attack) は、脳梗塞と同様の症状が一時的(通常24時間以内、数分〜数時間)に現れ、自然に消失するものです。
代表的なTIA症状
片麻痺・片側のしびれ:顔面や腕、脚に生じ、一時的に力が入らない
言語障害:ろれつが回らない、言葉が出にくい
視野異常:片目または両目の一部が見えにくい(視野欠損、視力低下)
めまい・ふらつき:立てなくなる、バランスがとれない
ポイント:TIAは脳梗塞の前触れであり、放置すると数日〜数か月以内に本格的な脳梗塞発症リスクが高まる。早期受診が重要。
2.2 急性期の典型症状
片麻痺・片側の運動麻痺
顔面(半側顔面の引きつりや片側の表情低下)、上下肢の片側麻痺が典型。
特に利き手側の手指や腕が動かしにくくなり、物を持てない、箸を使えないなど日常生活動作に支障が出る。
感覚障害(しびれ・感覚鈍麻)
麻痺と同時に、片側の手足がしびれる・何も触っていないのに感覚が鈍い(知覚鈍麻)など。
顔面にも現れることがある。
言語障害
構音障害(構音障害):ろれつが回らない、呂律が回らず、話が不明瞭に聞こえる。
失語症:言葉が理解できない(受容失語)、言いたい言葉が出ない(発語失語)など。
症状は、支配領域が優位半球(通常は左脳)の場合に顕著。
視覚障害
片側視野欠損:片方の視野(左右どちらか半分)が欠けて見える。
複視(眼球運動障害):物が二つに見える。
特に後頭葉や視路を供給する後大脳動脈領域の梗塞で目立つ。
めまい・平衡障害
小脳や脳幹部の梗塞では強いめまい、ふらつき、嘔気・嘔吐を伴うことが多い。
立ち上がれないほどの突発的なふらつき、歩行失調(歩くとフラフラする)など。
嚥下障害(飲み込み障害)
嚥下時にむせる、誤嚥性肺炎のリスクが高まる。
特に延髄や橋部の梗塞で発症しやすい。
意識障害
軽度のぼんやりから昏睡まで幅広い。
大きな脳梗塞や脳浮腫を伴う場合には、呼びかけに反応しない、意識混濁を起こす。
激しい頭痛
脳梗塞では脳出血ほど頭痛が強くないことも多いが、心原性塞栓症で突発的に起こることがある。
特に若年者やくも膜下出血を鑑別する必要がある場合には注意。
2.3 「FAST」サイン(救急受診の目安)
F(Face)顔面のゆがみ:笑顔を作るように頼んで口や顔が左右で非対称になっていないか
A(Arm)腕の脱力:両腕を前に挙げてもらい、片側の腕が下がったり垂れ下がったりしないか
S(Speech)言語障害:簡単な文章を言わせて、呂律が回らない、言葉が出にくいか
T(Time)時間が大事:これらの症状が現れたらすぐに119番通報。時間経過で脳細胞はどんどん死滅する。
3. 脳梗塞の予防法
脳梗塞は、一度起こると後遺症のリスクが高まり、介護度が上がる要因になります。以下の 「一次予防」(初発を防ぐ) と 「二次予防」(再発を防ぐ) に分けて解説します。
3.1 リスク因子の管理
高血圧
脳梗塞最大の危険因子。降圧治療目標は一般に140/90 mmHg未満、75歳以上は150/90 mmHg未満が目標とされるが、個々の状態で調整。
在宅での血圧測定(朝・夕)、降圧薬の内服忘れ防止も重要。
糖尿病
HbA1c(ヘモグロビンA1c)を目標(6.5〜7%程度。ただし低血糖リスクや高齢、合併症により緩めに設定)にコントロール。
食事・運動療法に加え、必要に応じて内服薬やインスリン注射。
脂質異常症(高LDLコレステロール、低HDLコレステロール、高トリグリセライド)
スタチン系薬剤による介入が有効。LDLコレステロールを140 mg/dL未満(高リスク患者は100 mg/dL未満)に。
生活習慣改善(食事で飽和脂肪酸の摂取を控え、魚や豆類などを積極的に)。
心房細動(不整脈)
心原性脳塞栓の大きな原因。定期的に心電図(または心電図モニター)のチェックを行い、抗凝固療法(ワルファリンやDOAC:ダビガトラン、リバーロキサバンなど)を検討。
高齢者では検出されにくい“無症候性心房細動”のスクリーニングも重要。
喫煙
脳血管障害リスクを高める。禁煙指導とサポートが必要(禁煙外来、ニコチンパッチなど)。
肥満・運動不足
BMI(体格指数)が25 kg/m²以上は動脈硬化リスク上昇。定期的な有酸素運動(週150分以上を目安)を指導。
過度の飲酒
男性で1日純アルコール20 g以上、女性で10 g以上でリスク増。節度ある飲酒(日本では1合程度)が望ましい。
その他
睡眠時無呼吸症候群:肥満者やイビキのある方は精査を。
メタボリックシンドローム:高血圧・脂質異常・高血糖・腹部肥満の複合を早期に管理。
3.2 生活習慣改善
食事療法
減塩:1日6 g未満(高血圧患者や高齢者は6 g未満が推奨)を目指す。インスタント食品・外食の塩分量を減らす工夫。
脂質の質に注意:飽和脂肪酸(バターやラード)を控え、青魚(DHA・EPA)やオリーブオイルなどの不飽和脂肪酸を積極的に。
野菜・果物の摂取:1日350 g以上(野菜摂取量の目安)。ビタミン・食物繊維で動脈硬化抑制。
運動療法
有酸素運動:ウォーキング・ジョギング・サイクリングを週150分以上(1日に換算すると20~30分程度を毎日)。
筋力トレーニング:手軽な自重トレーニング(スクワット、腕立て伏せ)を週2回程度。筋力低下を防ぎ、基礎代謝を向上させる。
禁煙支援
家族や同居者も含めた禁煙環境づくり。ニコチン代替療法(パッチ、ガム)、禁煙外来でのカウンセリング。
節酒
“週2日以上は休肝日をつくる”、“1回のお酒はビール中瓶1本、日本酒1合程度まで”など具体的目標を設定。
ストレスマネジメント
過労や強いストレスは血圧上昇や不整脈の誘因に。適度な休息、趣味の時間を確保する。
3.3 薬物療法(一次・二次予防)
抗血小板薬(アスピリン、クロピドグレルなど)
アテローム血栓性脳梗塞の二次予防では、発症後早期から使用し、再発率を低下させる。
原則として一次予防(発症歴のない人)には適用しない。リスクが非常に高く、他に禁忌がある場合は検討される。
抗凝固薬(ワルファリン、DOAC)
心房細動を伴う場合、脳塞栓予防として必須。チャッドスコア(CHADS₂、CHA₂DS₂-VASc)でリスク評価し、適宜導入。
INR管理や腎機能チェック、出血リスク(ヘモグロビン値、消化管出血既往など)の評価を定期的に行う。
脂質異常症治療薬(スタチン、エゼチミブなど)
LDLコレステロール低下により動脈硬化進展を抑制。脳梗塞発症リスクを低減する。
降圧薬(ACE阻害薬、ARB、Ca拮抗薬、利尿薬など)
血圧コントロールは最も重要。降圧薬の多剤併用で目標血圧を達成する。
糖尿病治療薬
インスリンや各種経口薬で血糖をコントロール。HbA1c過度の低下は低血糖リスクもあるため、高齢者では慎重に設定。
4. 脳梗塞の後遺症(合併症を含む)
脳梗塞発症後は、壊死した部位によってさまざまな後遺症が残ります。回復の程度は個人差がありますが、在宅で介護・リハビリを続けるうえで理解しておくべき主な症状を以下に示します。
4.1 運動麻痺(片麻痺・四肢麻痺)
片麻痺:発症直後に出現しやすく、リハビリによって一部回復する例も多い。
痙性麻痺(麻痺側が徐々に硬くなる、筋緊張が高くなる)と 弛緩麻痺(筋肉が弛んで力が入らない)がある。
在宅では、移動・移乗・排泄・食事など日常生活動作(ADL)に大きく影響。車椅子や歩行器、片手で扱える福祉用具の選定が必要。
四肢麻痺:脳幹部や両半球に病変がある場合にみられる。
両上肢・両下肢とも麻痺し、寝たきりリスクが高い。
4.2 感覚障害
体性感覚障害:痛み・温度・触覚がわかりにくくなる。
麻痺側の手足を火傷したり、衣服を噛んでしまうなどの危険があるため、皮膚チェックや環境整備が必要。
感覚が鈍いと床ずれ(褥瘡)リスクも高まる。
4.3 言語障害
失語症
運動性失語(ブローカ失語):言語を理解できても、言葉が出にくい。
感覚性失語(ウェルニッケ失語):ろれつは回っているが、意味不明な言葉を話す、相手の言うことが理解できない。
全失語:両方の領域が重度に障害された状態。
構音障害(失音性構音障害)
筋肉そのものの麻痺により、言葉が不明瞭。誤嚥リスクも伴う。
在宅での支援ポイント
ゆっくり話しかけ、イエス・ノーで答えられる質問をする。
ジェスチャーや筆談ボード(絵や文字を書いてコミュニケーション)を活用。
4.4 嚥下障害(飲み込み障害)
誤嚥:飲食物が気管に入りやすくなり、誤嚥性肺炎を起こしやすい。
口腔ケア:嚥下リハビリ(嚥下体操、顎や舌の運動)、むせやすい食形態(トロミ調整、ミキサー食など)の検討が必要。
食事介助:食事中は座位保持を徹底し、30分以上は横にならない。
4.5 認知機能障害・高次脳機能障害
注意障害・見当識障害:時間・場所がわからなくなる、集中力が続かない。
記憶障害:新しいことを覚えにくい、日中に同じことを繰り返す。
実行機能障害:計画立案や問題解決が難しく、薬の飲み忘れや家事手順がわからなくなる。
失行・失認:物の使い方がわからなくなる(身の回りの動作が困難)。
支援ポイント
スケジュール管理(カレンダー、タイマー、ホワイトボードなど)で“見える化”する。
周囲の人が適宜声がけし、安全確認を徹底。
4.6 感情・精神面の変化
うつ状態・抑うつ:急性期を脱してから数か月後に生じることも多い。自己効力感の低下や、「以前の自分に戻れない」ことへの喪失感。
感情失禁(情動失禁):突然涙が止まらなくなったり、大声で笑い出したりする。感情コントロールが難しい。
易怒性・暴言:ストレスや挫折感から怒りっぽくなる場合もある。
対応策
定期的なメンタルヘルスチェック、うつ状態のサインを早期に把握し、精神科・心療内科への紹介を検討。
ご家族や介護スタッフが感情変化を理解し、否定せずに受け止めるコミュニケーションを心がける。
4.7 その他の後遺症
歩行障害・失調:ふらつきやすく、転倒リスクが高い。
痙縮(筋緊張の亢進):関節可動域制限や筋肉の硬直が生じ、拘縮(関節が動かしにくくなる)を招く。定期的なストレッチが必須。
疼痛(神経因性疼痛):麻痺側にしびれやチクチクする痛みが続くことがある。鎮痛薬や理学療法で対応。
排尿障害・便秘:膀胱直腸障害で頻尿や失禁、便秘がみられる。排泄ケアの計画を立てること。
5. 在宅介護での注意点と支援
訪問介護事業所として脳梗塞発症・後遺症のある利用者を支援する際には、以下ポイントを押さえましょう。
5.1 アセスメントとケアプラン作成
ADLレベルの把握
要介護度判定のため、食事・排泄・移動・入浴などの自立度を定期的に評価。
体重減少や栄養状態(BMI、スケール)も確認し、栄養指導や訪問栄養士の連携を検討。
後遺症ごとの具体的ニーズ整理
麻痺側の可動域、筋緊張の程度を理学療法士や作業療法士が評価し、ストレッチや筋力維持運動をプログラム化。
言語・嚥下機能評価を言語聴覚士が実施し、飲み込み練習やコミュニケーション支援ツールを取り入れる。
認知機能(高次脳機能障害)については、日常の見守り計画、薬の管理方法(薬ボックスやピルケース)の検討が重要。
環境整備
段差解消、手すり設置、車椅子の通行スペース確保など住宅改修の助言。
滑りにくい床材やマット、トイレ・浴室の安全バー設置を検討。
5.2 リハビリ連携
訪問リハビリテーション(理学・作業・言語聴覚)
週2〜3回程度の理学療法士訪問で、筋力トレーニング、歩行練習、バランス訓練を継続。
作業療法士による、日常生活動作訓練(食事・更衣・整容など)、家事動作の工夫。
言語聴覚士が嚥下リハやコミュニケーション支援を実施。
自主トレーニング指導
毎日行えるストレッチ・立ち上がり訓練・握力トレーニングなどを家族と共有し、継続をサポート。
5.3 薬剤管理・服薬アドヒアランス
抗血小板薬・抗凝固薬・降圧薬などの内服忘れ防止
一包化薬やピルケースの提案。
服薬記録表を用意し、訪問時にチェック。
副作用・出血リスクの観察
抗凝固薬では出血(歯茎出血、黒色便など)に注意。
出血傾向がみられたら、医師への連絡と止血対策を検討。
5.4 栄養管理と口腔ケア
嚥下機能に応じた食事形態
3段階(普通食→軟菜食→極トロミ食など)に応じて、栄養バランスを保ちつつ誤嚥を防止。
1回の食事量・回数を調整し、食事時間を十分に確保する。
口腔ケア
食後および就寝前の歯磨きやうがいを徹底し、誤嚥性肺炎のリスクを減らす。
義歯の洗浄や口腔内の乾燥対策も重要。
5.5 認知・精神面のサポート
生活リズムの安定化
毎日同じ時間の起床・就寝、食事スケジュールを維持し、見当識障害の悪化を防ぐ。
レクリエーションや趣味活動を取り入れ、うつ状態の予防につなげる。
家族・ケアスタッフとの連携
日々の行動記録を共有し、変化(睡眠・食欲・感情の起伏)を早期に察知。
スタッフ間で情報を共有し、一貫した対応を行う。
5.6 インシデント予防策
転倒防止
視覚障害や歩行障害がある場合、夜間トイレ誘導時の照明確保、歩行器の使用を徹底。
床の整理整頓、コードや段差をなくす。
褥瘡(床ずれ)予防
麻痺側の感覚が鈍いため皮膚チェックが必要。
体位変換(2時間ごと)やクッション、マットを利用し、圧迫部位を分散。
誤嚥性肺炎予防
嚥下機能に合わせた食形態、口腔ケア、姿勢管理(食事中は背筋を伸ばした座位を維持)を徹底。
6. まとめ
「早期発見・早期対応」が最優先
脳梗塞は発症から時間が経つほど脳細胞が失われ、後遺症が重度化する。TIAの段階でも受診を促し、救急要請をためらわない。
訪問スタッフは、利用者やご家族にFASTサインを伝え、異変時には即座に119番を。
リスク因子管理と生活習慣改善で「一次・二次予防」を徹底
高血圧・糖尿病・脂質異常・喫煙など複数の因子を包括的にコントロールする。
介護現場でも利用者への健康指導、家族への支援を継続的に行う。
発症後は「多職種連携による総合的リハビリ・ケア」が鍵
理学療法士・作業療法士・言語聴覚士などリハ専門職と訪問介護スタッフが連携し、生活リハや口腔ケア、認知サポートを進める。
家屋改修や福祉用具導入の提案・サポートを行い、安全な在宅生活を支援。
後遺症を正しく理解し、個別性の高いケアプランを設計
運動麻痺だけでなく、感覚障害、言語・嚥下・認知・精神面の変化にも注意が必要。
定期的なアセスメントを行い、遷延する課題には速やかに専門医やリハ職へ相談する。
ご家族・介護スタッフ間の情報共有とメンタルサポート
うつ状態や感情失禁など、精神面の変化は家族にとっても負担。早期に気づき、ケアマネジャーや精神科・心療内科と連携する。
介護スタッフ同士の申し送りを徹底し、利用者の変化を見逃さない体制をつくる。
脳梗塞は予防が何よりも重要ですが、万一発症した際には適切な急性期治療と迅速なリハビリ介入、さらに在宅移行後の継続的ケアによって、QOL(生活の質)をできる限り維持・向上させることが可能です。訪問介護事業所としては、医療機関との連携を密にするとともに、多職種で一貫したケアプランを立て、利用者およびご家族をしっかり支えていきましょう。
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